【アーセナル 対 マンチェスター シティ】


直前のミドルズブラ戦で新システム3-4-2-1を起用し、多くの人を驚かせたアーセナル。その試合で完成度が低かった事からシティ相手にどのようなシステムで挑むのか試合前の時点では全く読めなかった。答えは3-4-2-1。メンバーは前回と同じく、GKはチェフ。3CBは左からホールディング、コシェルニー、ガブリエル。CHはジャカラムペアでWBはモンレアルとペリーエドワーズの彼氏。CFはジルーで2シャドウにサンチェスとエジル。んでベンチにはウェルベックが怪我から復帰。先日誕生日を迎えた変顔大将ことムスタフィさんはスタンドからTwitterで実況する係に。

一方シティ。システムは4-2-3-1。この間からコンパニが度重なる怪我から復帰。いや〜なんか親近感が湧くね〜!

"アーセナルの前プレ・シティのビルドアップ "


序盤はシティがビルドアップでのボールの前進を成功させる。サイドバックのナバス・クリシが幅取り役でフェルナンジーニョが右落ちして3バック変換。アンカーの位置にヤヤトゥレが入り、パスコースを確保+アーセナルのCHをピン留めする事で、アーセナルが3トップでシティの3バックに同数でプレスを掛けてきたとしてもボール保持の基準を一列前に上げれば数的優位とスペースを確保出来るという仕組みになっていたヨーン。

アーセナルが3-4-2-1で前線からプレス(3トップを3バックにぶつける形の)を掛けた際のウィークポイントは2CHのところになる。前線と最終ラインに3人ずつ配置するため、単純に枚数が足りず2人でカバーしなければならない範囲が広いから。この問題をラムジーのスタミナとパワフルさで誤魔化そうというのがアーセナル側の狙いだったのだろうけれど、アンカーの位置にいるヤヤトゥレに1人引っ張り出されてしまうため、実質CHの位置で守る選手が1人となり、「流石にラムジーがいてもケアしきれ無いンゴラン!」という状況に。そしてそこを抜け目なく狙ってくるのがデブライネとシルバ。2人は"CH(特にジャカ)の死角からスタートしてCB陣の追撃が届かない場所でパスを受ける"というプレーでボール運びのフォローとアーセナルのCBを引き付けてDFラインを乱させる役割を担っていた。

"撤退守備"



前プレが機能しない事がわかったアーセナルは早々に撤退守備へと切り替える。時間帯の早さからみるに、前プレが機能しなかった場合の対応を事前に指示されていたのだと思う。システムは5-4-1。シャドウのサンチェスとエジルがキチッと戻ってきてシティのサイドバックに対応。1トップのジルーが孤立してしまいそうなところにはCHが出ていき1列目の守備の強度を保つ形。撤退守備に切り替えた事で裏抜けされるリスクが低くなり、守備陣の前方へのチャレンジがより明確に・思い切りよく出来るようになったため、前プレ時のウィークポイントであったシティの中盤での空間的優位をCBの追撃守備で妨害出来るようになっていた。

この変更によりシティはCBとCHが時間が得られるようになったけれど、そこから効果的なパスが出ない、またはパスが出てもアーセナルのCBの追撃守備に捕まるという形が多く2列目を突破する事に苦労していた。
ただアーセナルも、サンチェスのポジショニングがヘススナバスによって押し下げられていたためカウンターへの移行が上手くいかず敵陣地へ侵入出来ない時間が続くように。

シティのゲームプランはポゼッションで相手の体力を削り運動量が落ちてきたところ狙い目にする事だったと思う。そしてアーセナル側も「撤退守備が機能しているし前半は取り敢えずこのままで良いよね」という風に後半に焦点を当てたゲームプランだった。よって細かな流れの変化はあれど、前半は基本的にボールを支配するシティ、引いて構えるアーセナルという構図になっていた。

"アーセナルのビルドアップを破壊するシティの前プレ"

3バック起用の利点の1つがビルドアップでの配置的優位。守備をゾーンバランスの取りやすい4-4-2のシステムで行うチームが多いため、3CB対2トップで数的優位を確保しましょうってのが狙い。そしてシティの守備時のシステムもトップ下のシルバを押し出しての4-4-2。んまあここに書いた通りなら「アーセナルの狙い通り!」ってなるんだけれど、そうさせないように対策してくるのが普通だよね( 笑 )

シティの対策は前線を3枚にして同数でプレスをかける事。基本は4-4-2でスタートし、シルバ・アグエロの2人でコシェルニー・ホールディングに、2CHでジャカ・ラムジーにプレスを掛けていきボールを右サイドへ誘導。サネとクリシが定位置から縦にスライドしてガブリエルのところで捕まえようという算段だった。狙い所をサネの位置に絞った理由は、右サイドで守備に不安のあるヘススナバスとアーセナルの攻撃の核であるサンチェスとの人材的ミスマッチが起きるためアーセナルにそこを使わせたくなかったからだと思う。
3バックに3トップをぶち当てて数的不利を解消する形はトレンド。実はこれアウェイのチェルシー戦でアーセナルもやった対策なんだな〜。

配置的優位を消されたアーセナルは強度の高いシティの前線からのプレスにビルドアップを破壊されてしまう。ただこんな時に便利なのがロングボール。空中戦の優位が計算できるジルーをターゲットに、セカンドボールを回収して速攻を仕掛ける形が何度か見られた。

前半23分にシルバ→スターリング。負傷交代。シティにとってかなり痛手だったと思う。ライン間で精度の高いプレーができる選手がデブライネのみとなる且つ、デブライネをトップ下に移さなければならなくなったので、撤退守備から得点するための有効な手の一つのアーリークロスが削れてしまった。

それでもチャンスを作ってしまうのがデブライネ。前半39分、空いているジャカ脇・ハーフスペースでボールを貰いWB-CB間を貫くスルーパス。それを受けたサネの折り返しにアグエロ
とスターリングが飛び込みネットを揺らすもゴールキックの判定。…ってライン割ってないジャン!
あぶねえええええええええええええ!!!!

前半はこのまま0-0で終了〜。

"変化の後半"

後半立ち上がりからアーセナルが敵陣地へ侵入出来る回数が増える。理由はサネの出足に遅れが見え始めシティの同数プレスが機能せず、アーセナルがビルドアップでの配置的優位を復活させる事が出来たから。同数プレスのデメリットの一つは運動量が必要なため前線の選手への負担・消耗が大きくなる事。よってお互いが後半に勝負をかける我慢比べみたいになってた展開から試合が動き始める。

同数でのプレッシングが機能しなくなったと言ってもボールを保持しているのがCBのガブリエルで後ろは枚数を確保出来ているからそんなにピンチにならないでしょとシティ側は考えていたのだと思う。ただここでシティへ新たな問題を突きつけたのがエジルとチェンボ。エジルはヤヤトゥレ脇にポジショニングしてパスコースを確保+ゾーンの合間に位置する事でクリシとサネに「誰がどっちに着く?」という問題を追加。慌てた味方からボールキープが難しいような乱れたパスを受けても、ファールを貰って流れを落ち着かせるという職人技も。

そしてチェンボ。エジルの補佐もあって質的優位を活かしたゴリゴリドリブルが炸裂。しっかりファーサイドまで見る事でルックアップでき、視野確保できていたのも好印象。ただ、アーリークロス等をニアで引っ掛けてしまう事が多く見られたのでここは課題かな。

"グアルディオラの対応"

シティはこのまま同数でプレッシングを掛け続けるのは得ではないと判断し、守備時のシステムを4-1-4-1に変更。消耗を抑える事の他に、中盤の枚数を増やしてエジルに突かれていたヤヤトゥレ脇を塞ぐ狙いがあったと思うけど、アンカーのフェルナンジーニョがサンチェスへのカバーへ追われていたため左サイドではそこまで効果は現れなかった。

このシティのシステム変更により、アーセナルはガブリエル、ホールディングの両センターバック、そしてアンカーのジャカに時間を与えられるようになる。無論、そうなればジャカのフィードを活かすしか無いっしょと。このジャカを起点にサイドのサンチェス、チェンボへのアイソレーションが機能するようになり、じわりじわりとアーセナルがシティを押し込んでいくように。

しかし後半17分。シティ先制。カウンターでヤヤトゥレからのタッチダウンパスをアグエロが冷静にちょこんと浮かして沈めた。ラムジーのボールロスト、カバーリングに入る選手が1人しかいなかったというアーセナルのリスク管理の甘さを突かれてしまったかなと。

"失点後のアーセナル"

失点した事により撤退守備をやってても時間を使われるだけになったアーセナル。すると今度はアーセナルがシティの3バック変換に対して同数でのプレッシングに移行する。前半省エネ戦法だった事もあってサンチェスは元気モリモリ。自分のマーカーへのパスコースを切りながらブラボにまでプレスに行っていた。
シティは当然、プレスを回避しようとするが前線は小柄な選手ばかりで空中戦で勝てない。アーセナルのDFラインが高く設定されているのでブラボは裏に向かってロングパスを送ろうとするも、前線のオフザボールの動きが乏しい等と、アーセナルのプレスを回避しきれず、ボールを回収されてしまう事が多くなっていった。

そして後半26分。アーセナル同点。チェンバレンのクロスを上がっていたモンレアルが右足で流し込み同点。アーセナルが再三狙っていた形が実ったゴールだった。

"同点後の両チームの動き"

同点に追いついた後のアーセナルは再び5-4-1の撤退守備に戻す。理由は延長を見据えて消耗を避ける、または直後に追いつかれては全く無意味なので…っといったところ。ただ前半と違いジルーの体力が明らかに落ちていたため1列目を簡単に突破される事がしばし。
そしてシティの攻撃のスイッチを入れていたのはヤヤトゥレ。アグエロやデブライネのレイオフを巧みに利用してバイタルエリアに侵入。点が入ってもおかしくないシチュエーションを作り出していた。

最後の最後で体を張って掻き出してくれたジャカ・ラムジーの2CH、CB陣、チェフ神、ゴールポスト・クロスバーさんマジ感謝。スゲー感謝。

アーセナルは後半38分にジルー→ウェルベック。「クロスターゲットを削るのは痛いけれどこうしちゃいられんぞ。」ってな交代。
そのウェルベックのロングスプリントを活かしたカウンターからチャンスを作るもスコアは動かず、1-1で延長戦へ突入。

"延長戦"

延長前半アーセナルはウェルベックを左に、サンチェスを中央にポジションチェンジさせる。サイドの守備力の向上とカウンターでのターゲットを作るのが狙い。ヘススナバスは攻撃時にサイドで高い位置をとる役割なため、ウェルベックの長距離スプリントを活かしやすい状態だった。
この策が的中。延長前半10分。ウェルベックが左サイドでフリーキックを獲得しそのフリーキックの流れからゴチャゴチャしたところを、サンチェスが押し込んでアーセナル勝ち越し。エースはきっちり決めてくれるな〜w

"勝ち越された後のシティ"

失点の直前にフェルナンジーニョ→フェルナンド、アグエロ→デルフという交代を行っていたシティ。前線は高さが、中盤は展開力が欠ける組み合わせとなるため、サイドアタッカーのカットインとサイドバックの攻撃参加で押し切る戦い方に切り替え。
しかしこの突破口を直ぐに塞いだのがアーセナル。チェンバレン→ベジェリンの交代でカバーリング組織を向上。殆ど形を作らせなかった。

延長前半終了。2-1。アーセナル1点リード。

"延長後半"

延長後半。シティはスターリング→イヘアナチョの交代。カットインドリブルが対策されたのでそれを切り捨てサイドアタッカーにオフザボールの動きをって狙い。ウェルベックやエジルにサイドバック裏をカウンターで度々狙われるも、構わないって感じだった。しかしサイドでどれだけアクションを起こしても中盤の選手が出し手として機能せず崩せない、デブライネが降りて来ると前線でアクションを起こせる選手がいないのがシティの問題だった。シルバかガブリエルジェズスがいたら…ってところなんだと思う。

試合は2-1でアーセナルが勝利!!
決勝進出!!!!!!

"まとめ"

会心の勝利!審判に助けられた部分もあるものの、ゲームプラン・采配・結果・選手各々のプレーもどれも非常に満足いくものだった!

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