【プレスと4-3-3についての雑感】


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ノースロンドンダービー。勝ち点3を奪えなかったことや、個人的にずっと推しているジャカが大ポカをやらかして批判されていることには非常に悔しい感情があるけれども、内容はそれ以上に楽しく、満足感のある試合でした。

そう感じた最大の要因は、能動的でアグレッシブなプレスが久しぶりに見られたこと!!





  • オーバメヤン、ペペがSBを切りながらプレス。ロリスとCBから時間を奪う。(ここのスピードが本当に尋常じゃない)
  • ラカゼットが相手CHのラインまでプレスバック。ロングボールを蹴られた後のセカンドボール争いにも参加。
  • 浮いているSBにはグエンドウジ・トレイラがアタック。
  • ジャカ+2CBでロングボールに対応。
  • SBは状況に応じて前プレ隊に加わったり、後ろのカバーにまわったり。

なんとなくだけどエメリは、前プレ隊=5人というの、相手の組み立てを窒息させたい時の基本構成にしている気がする。(3-4-1‐2の時の前三枚+WB、1月のBLDの2トップ+ラムジー+IH、今回の前三枚+IH)

守備ラインが低いときは基本的に純粋な2トップな印象。

















このプレスに対してスパーズはたじたじであり、最終的にはバックラインを上げて蹴っ飛ばすことしか為す術がありませんでした。








1失点目のシーンは、確かにそこからのロングボールがスコアに直結した形ではありますが、こういった被りによるミスは結局どのシステムでもおこりうることですし、ダヴィド・ルイスがディレイを選択していればカバー(こちらの帰陣のほうが速く、数的優位で対応)できていた確率が高いプレーですので、システムとの因果よりも個々の判断ミスの連鎖がこの結果につながったと感じています。

まあ、この構成での日の浅さがこういった連携ミスを生み出した可能性は十分にあるので、そういった意味では、システムによるものだなとも思います。








・4-2-3-1と比較しての4-3-3


前の記事で4-3-3を見たい!と述べていたのでまとめます。


まずはメリットになりうる点について。



1つ目は、バイタルエリア(ラカゼット周りのスペース)を複数の選手で共有できること。この恩恵を最も受けると思われるのは、やはりオーバメヤンでしょう。

トップ下の選手にスペースを与えるための幅取りのタスクが重要視される4-2-3-1と比べて、自分がスペースを使う側となれる4-3-3のウイングでは、よりフィニッシュワークに絡みやすく、オーバメヤンの個性を活かしやすい。

そして、カットインをしながら中の状況を探ることができるペペにとっても、そんな選手が逆サイドにいて、ゴール前で動けるというのはプラスに働くのではないでしょうか。





ペペが内側に運んで相手の視線が集まる→ラカゼットがDFを背負って縦パスを要求→オーバメヤンがすっと降りて中継点に。

最後はごちゃごちゃした形になりましたが、ここのフィーリングが嚙み合うようになれば、リバプールのトリオのようなスピードが全く落ちないワンタッチ芸だったり、逆にラカゼットが落ちてそのギャップからオーバメヤンが飛び出し→ペペがクロスを届けるという形だったり、或いはサンチェスがオーバにつられたのを見て1個奥のコラシナツに通すメッシ・アルバのような形だったり。




いろんな可能性があり、それを実現させるポテンシャルを持ち合わせているんじゃないかなと僕は思います。


ついでに言うと、オーバメヤンは単純にサイドへの適性が上がっているように感じます。ドリブルで長い距離を運べる頻度が増え、今季すでに1点決めているように、カットインシュートやクロスへの持ち込み方もスムーズになっています。そのクロスの質も、味方に点で合わせるような代物ではありませんが、スピードや角度が本職のそれに近く、面白い。






Jose on Aubameyang: "He wants to play in the middle because he feels he can get more goals, but maybe he can get just as much playing from the left."

僕もこのモウさんの見解には同意で、今のオーバメヤンならばサイドでも結果を残すと思う。それでいてこの貢献度を維持できるのであれば、試合展開によって使い分ける必要性があるにしても、十分に優秀なサイドアタッカーの域だと思う。



話題がだいぶ脱線してしまいましたw


また、ラカゼット周りにスペースがあることは、中盤のシュート数増加にも繋がるでしょう。この試合では、特にトレイラが積極的に攻撃参加を見せていました。




と、言いつつも1番惜しかったグエンドウジのシュートシーンを載せる。

ボックスに入る選手が固定的であるより、誰が入るのか未知である方が守備側は対応が難しい。それが後方から飛び込んでくる選手であれば尚のこと。リバプール戦のような形でトレイラが得点したり、グエンドウジがこんなシュートを放ったりするのは、4-2-3-1ではまあまず見られないプレーでしょう。

ただ、流動的であることはネガトラ時の配置の乱れに繋がります。特にIHはそれに大きく関わるポジションです。現状では、エメリはそこをもうちょい考慮してさじ加減を加えてあげた方が良いかな~と思います。



2つ目は、前線に対する後方のレシーバーとしての役割が3人に分散され、中盤がバックパスの受け手として安定することです。


一旦、前にボールを当て、フリーとなっている中盤がサイドへ展開する。








一度相手の重心を内側に集めてからの展開なので、その効果は通常の長いサイドチェンジよりも大きく、サイドの選手が勝負できる状況を作りやすい。この試合では、後半から特に横の揺さ振りを意識しているようでした。

また、レシーバーの状態が安定することは、近距離での縦パスの出し入れがしやすくなることに繋がります(厳しければリターンすれば良い話なので)。そして、その細かな出し入れは、守備者の動き、すなわち攻撃で活用できるスペースを作り出すきっかけになります。




すっと下りてきたオーバメヤンとパス交換→シソコの意識が手前に向いたところで、1個奥のラカゼットへ。(個人的に、あの絶品アシストに次いでこの試合でグエンドウジがみせた好きなシーン)


これらのように前線への出し入れを繰り返す形は、ボールキープと縦パスの処理に長けたラカゼットと非常にマッチしていると思います。


ただ、この試合だけではまだ少しサンプル数が心許ないな、というのが正直なところ。なぜなら、この試合はスパーズの噛み合わせを外せていて、その要因の方が大きいという可能性が否めないから。自分の観点では、4-3-3によるものだと思っていますが、より正確に知るためには、もっと色んなチームとの試合を観察する必要がありそうです。


・上手くいっていない部分について


言うまでもなく守備(ミドルサード~自陣での)でしょう。まあ、これは4-3-3だからというのではなく、受動的に守るしかなくアイソレーションでちんちんにされてしまう4-4-2も同等以上に厳しいものですが、その構成に疑問符が付きます。



今回のノースロンドンダービーの4-3-3をみて、必ず上がるであろう話題がアンカーのところの守備。ジャカがアンカーで守備ができるのかと。

僕の観点では、贔屓目を抜きにしても、「守れる」と思う。

ただし、ここでいう”アンカー”は「DFラインとMFラインの間に立つポジション」ではなく、「3CHの中央」のことを意味します。


結局のところ、4-1-4-1というのは、守備ラインが4つで構成されるため全体が縦に間延びしやすいシステムです。それゆえ所謂5レーン理論の普及にともない、ハーフスペース攻略が発達した現代では、そういったスペースは格好の餌食となりアンカーの選手に求められる守備タスクがとてつもなく大きく、機能不全に陥るケースが多発していました。


そこでポピュラーになっていったのが、アンカーを中盤の3人に組み込み、フラットな状態で守備をする4-5-1です。








4-1-4-1と異なり守備ラインが3つであるため縦の陣形をコンパクトに保ちやすく、かつ、中盤で5レーンを封鎖できることが非常に効果的でした。

この陣形では、守備者それぞれの守るゾーンが限定されるかつ、カバーリングを行いやすい距離感を保てるため、単体では「守備が不安」と言われている選手でも、強固な守備ブロックの構築に大きく貢献しているケースが数多く存在します。

僕は、ジャカはここに分類される選手だと認識しています。


対して、現在のアーセナルの守備ブロックは、”4-3”である。

「4-4のブロックでも耐え切れないところが多い。4-5、もしくは5-4でやっと」と言われる時代であるにも関わらず、です。



当然スライドは間に合わないし、静的であることが望ましい中盤が動き回らざるをえないので、本当に危険なエリアが度々晒されてしまう。

こればかりは、ジャカの適性云々を語る以前の問題で単純に人が足りなさすぎる。

確かに前3枚はカウンターで使うのに魅力的すぎる人材です。しかし敵陣でならまだしも、自陣でこんな枚数で守備をしていては、確実に狙い撃ちされ、仕掛けられるカウンターの母数やその質はどんどん低下していくでしょう。


エメリが「守備のバランス×カウンター要因」の落としどころをどうするか、ということが4-3-3が機能するかしないかのターニングポイントの1つとなるはずです。




・論評に対して


この試合に関する論評を複数読んだけれど、そのほとんどと、この試合に対するフィーリングが一致しない。


まずモウさんとマイケル・コックスの「ライン間の10番が必要だった」という評価についてだが、試合を通して中央をかなり圧縮していたスパーズに対してそこなのか!?と。

レノが、キャッチしてからのクイックリスタートを徹底していたことや、後半に横の揺さぶりを増やしたことから、エメリは密集地打開ではなく「広いスペースを、速く」というプランを立てていたように感じる。(そして、実際に後半の方が明らかに機能していた)

また、保守的(?)と表現したMF3人の組み合わせについても、「もっとも展開力のある」という表現のほうがより適当でしょう。





二人が言うクリエイティビティや打開力の部分はおそらくペペが担うことになるはず。この試合で機能しきれなかった理由としては、トレイラのボックスへの侵入が少し早すぎて、右サイドの攻撃に関わる人数が固定気味になったからかな~と。やはり、この部分は調整した方が良いと感じます。



2つ目がラカゼットに対する評価がシビアすぎないか?ということ。

この中央が密集している試合でもあなたたちの言うライン間で、ボールを引き出しては、前半だけで2本のフリーキック獲得に絡んだりしとるわけで。








利他的で他の選手のためにスペースを空けるのをいとわないこと、そのポストワークはお金を払ってみる価値があることは、もう何度も見てわかっているだけに、そういった評価をされるのは釈然としないな~。








・まとめ


ムヒタリアンがローンで移籍してしまったことにより、前線の枚数的に今後も4-3-3を起用する可能性がより濃くなったとおもいます。

その4-3-3がどんな道を歩んでいくのかをみて楽しみながら応援していきます!










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