【アーセナル 対 マンチェスター ユナイテッド】

スパーズとのノースロンドンダービーに敗れ、CL出場権獲得がますます厳しくなってしまった6位アーセナル。4月の半ば当たりから起用している3CBシステムを今日も採用。前節からの変更点はガブリエル→ホールディング、ジルー→ウェルベック。ガブはケインへの軽率なタックルでPKを献上した事がボスを怒らせちまったんだろうな〜と。想像だけど。

アウェイの5位ユナイテッドもなかなか厳しい時を過ごしているみたい。ヨーロッパリーグを勝ち進んだ事によって過密日程となり、イブラヒモビッチやCB等、主力に怪我人が続出。中3日でEL準決勝セルタ戦のセカンドレグを向かえるためこの試合は若手のトゥアンゼベを起用するなど主力を温存してきた。モウさんが試合前に弱気な発言をするなど珍しいものも見られたな( 笑 )

"ノーロンから修正"

立ち上がり、アーセナルの守備はCHの片方を押し出して前線のプレス強度を維持するいつもの5-3-2に加えて、3CBのスライドとチェンボの押し出しで4-4-2になる場面が見られた。

4-4-2へシステムを変更するメリットは大きく2つ。1つ目はサイドの枚数が増えるため、ウイングバックの守備への負担を軽減出来る事。ノースロンドンダービーの敗因の一つに、本職がアタッカーのチェンボの守備が不安なところをソンフンミンに狙われて右サイドを攻略された事がある。そして今回のユナイテッド戦でもこちらの右サイドを狙ってくるのは質的優位を作り出せるムヒタリアン。だからホールディングをチェンボのカバーに向かわせて守備を安定させようぜ!ってのが狙い。このホールディング・チェンボの関係は、同じく3-4-2-1から守備システムを4-4-2に変更するユーヴェのバルザーリ・ダニエウアウベスの関係と似ている。レベル?野暮な質問はやめてくれ(笑)

2つ目のメリットはシャドウの片方をカウンター要因として確保出来る事。撤退守備のシステムが5-4-1やCHを押し出す5-3-2では両シャドウにも守備のタスクが課せられるため、攻撃性能の高いエジルやサンチェスのスタート位置が低くなり、相手陣地への侵入が困難になる事がここ最近のアーセナルに見られていた。だからシャドウのどちらかを2トップの一角に押し上げて、ロングカウンターの迫力を増しつつ、守備の強度は維持したいというのが4-4-2へ変化させる意図だった。

ただ、これはあまり機能していなかった。ホールディングが背後を走るマルシャルにピン留めされてスライドが遅れ、WBとCBの距離感が遠くなり、チェンボが危険なタックルでムヒタリアンを止めに入らなければならないようなシーンが見られた。また、2トップ化した際のエジルのコース切りが甘くルーニーにCH-WB間への侵入を許してしまい、その流れから4分・7分と続けてマルシャルにピンチを作られていた。よってアーセナルはこの4-4-2へ変化する守備システムを序盤で切り上げて守備システムは普段通りの5-3-2や5-4-1になる。

ホールディングにこの役割をさせるならSB経験のあるガブで見たかったな〜。


"ビルドアップと左サイドの問題"

ユナイテッドは前線からのプレスをルーニーを前に押し出す4-4-2で行っていた。アーセナルは相手が2トップでプレスに来た場合、ジャカが中盤の底(相手2トップの間)に入って3CBと菱形を形成する事が主であったけれど、ユナイテッドの2トップがアンカー&コシェ切りを行ってきたためジャカ脇にラムジーを配置してスタート。ビルドアップの出口を増やす事が狙いだった。そして、これをより効果的にしていたのがライン間にポジショニングするエジル。ダルミアンの追撃が届かない所まで降りてきてキャリックやムヒタリアンの意識が自分に向けばレイオフでラムジー・チェンボに渡す、誰も食いつかなければそのまま反転するというプレーを繰り返しボールの回りをよくしていた。

ただ、試合を通してアーセナルの支配率はあまり高くなかった。その理由は左サイドにある。シャドウのサンチェスはエジルと同じように相手のCH-SH間にポジショニングしてパスを受けるのだけれど、サンチェスはここでレイオフを挟まずに躊躇なくターンや縦パスを狙う。加えて左のウイングバックのギブスはバランスを取るより上下運動をするタイプなのでより縦への加速が進み、チャンスに繋がるにしろロストするにしろ攻撃が速く終わってしまうように。

攻撃の目的は支配率を高める事では無く、得点を決める事であるので、今季のサンチェスの成績からサンチェスの狙い所や感覚は間違っていないってのはわかる。しかしボールロストや支配率の低下があれば、それだけ被カウンターや相手の攻撃時間が増えるわけで。1点取るのに2点失うリスクが伴うような事は避けたいよね〜と。

んまあ先述の通りサンチェスの攻撃での貢献度はかなり大きいのでここは維持したい。ってなると理想はウイングバック(ギブス)がバランサーとして組み立てへ貢献しながら、リスク管理を出来るようになれば…ってところだと思う。


"ユナイテッドの6バック"

とは言えユナイテッドからしたらチャンスを作り出すサンチェスは怖い存在に変わりはない。だから15分あたりからユナイテッドはシャドウ対策としてチェルシー戦でも見せたように撤退守備を6バックで行うようになる。本来のCB.SBの選手4人でペナ幅を固めてその大外をSHの選手が埋めて完全ドン引き。怪我人の状況、今後の試合日程を考えて引き分けでも良いという戦い方だった。

3-4-2-1に対して6バックが有効な理由な1つは、それぞれの選手の付くべき相手がハッキリする事。4バックで3-4-2-1と対戦すればSBが中に入るシャドウと大外を回るウイングバックのどちらに付けば良いのか?という問題が発生する。簡単に言えばBLDでマルコスアロンソにヤラレタ時みたいなもの。それをSHをWBに付かせる事によってSBをシャドウのマークに集中させられるようにするってのがモウさんの対策。本来ならばラッシュフォードやバレンシア、ポグバ等縦に違いを作れる選手を起用して後ろに重心が掛かり過ぎないように調整するのだと思う。

この変更によってCHと協力しながらエジルにはダルミアン、サンチェスにはトゥアンゼベがしつこく付きまとい、アーセナルのシャドウ2人はブロックの外でプレーをする事が多くなる。ラムジーが前線へ飛び出していきチャンスになりそうな場面をいくつか迎えるもトラップミスでアーセナルファンのイライラポイントをMAXまで持っていく。流石ラムジー( 笑 )

前半はこのまま0-0で終了。


"ヴェンゲルの修正"

後半、勝たなければならないアーセナルが動く。前半から引き続き6バックでゴール前を固めるユナイテッドに対して、アーセナルはサイド側のCBのポジショニングをかなり高く設定する。6バックのデメリットは本来SHがいるべきポジションで相手に時間・空間を与えてしまう事。そこから運んで部分的な数的優位を作り出そうというのがアーセナルの狙い。前掛かりになる分、最終ラインの背後に広大なスペースが出来るけれどマルシャル(時々CFの位置に入るムヒタリアン)の動き出しが単調だったので、コシェルニー1人でケア出来るという計算。そしてその計算通り、コシェルニーは完璧に抑えてこの戦術を成立させていた。
アーセナルのCBのポジショニングに対してユナイテッドはルーニーやエレーラがスライドして対応するようになる。でも、ルーニー側はボールを本気で奪いに行くというより数的優位を作らせないよう取り敢えず数合わせしとくみたいな感じだった。
これに反応しない訳が無いのがエジル。ルーニーがズレていなくなった所でラムジーとポジションチェンジを繰り返す。ダルミアンが付いてくればSH-CB間でラムジーがフリーに、ダルミアンがゾーンを埋める事を優先すれば中盤でスペースを確保出来るという仕組み。

そして後半8分、この仕組みが大きく絡んだって訳では無いけどジャカ砲が炸裂してアーセナル先制。
くううううう。 シュートは勿論、ゴールパフォーマンスも痺れるううううう!!

そして続いて直後の後半11分、チェンボのクロスにウェルベックが合わせてアーセナル追加点。

これは完全にボスのHTでの修正が功を奏した形。ホールディングのポジショニングを上げた影響で高い位置でボールを奪う事ができ、速攻に繋げられた。チェンボのクロスとウェルベックのヘディングもお見事。

2点差がついた事でモウさんは完全にELへと切り替え。ムヒタリアン→リンガード、エレーラ→ラッシュフォードとELで使いたいであろうメンバーを休ませる。

この交代の後から試合終了までモウさんは特にシステム変更等は行わず、アーセナル側もリードしていて負傷したジャカのところ以外、無理して弄る必要が無かったため両チーム共に大きな変化は見られなかった。

そのまま試合は終了して2-0でアーセナルの勝利!!

"まとめ"

やっとプレミアでモウさんに勝利!相手の状態がどうであろうとこれは無茶苦茶嬉しいっす!
このままCL圏内目指して突っ走りましょー!

CL出場権獲得の条件についてはさるさんのブログでどぞー↓↓


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