FA杯決勝。【アーセナル 対 チェルシー】

FA杯決勝戦。3バックに変更してから9戦8勝と怒涛の追い上げを見せるもCL出場権を逃してしまったアーセナル。ムスタフィ・ガブリエル・ギブスが負傷、リーグ最終節のエバートン戦で退場したコシェルニーが出場停止とDFラインが開幕戦並にキツイ状態。怪我で長期離脱していたメルテザッカーは今季初先発で、チェンバレンも左WBは初めて。

対してチェルシーはリーグ戦を戦い抜いたメンバーがズラリ。優勝を早く決めてリーグの最後の方を消化試合にできた事と、アーセナルの終盤の過密日程からの疲労やチーム状況を考慮すればチェルシー有利というのが大半の予想だった。
ただ、その予想を裏切るように開始3分でアーセナルが先制する。サンチェスが前足トラップでDFラインを突破しクルトワとの1対1を制してゴールという形だった。

"ミラーを避けるアーセナル"

ボールを保持した時のアーセナルはエジルとラムジーがIHとして振る舞い、サンチェスとウェルベックが2トップ気味となる3-1-4-2のシステムになっていた。こうする事によりビルドアップで3CB+ジャカの菱形の形成と、中盤で3対2の数的優位が計算出来るようになるという仕組みだった。よってアーセナルはビルドアップでのボールの前進をスムーズに行う事ができるようになる。

これに対してチェルシーは5-4-1のシステムからシャドウとウイングバックの縦のスライドで対応する。ジエゴコスタがメルテザッカーへのコース切りで誘導しプレスを掛けるサイドを決めて、最終ラインに枚数を残しながら前プレの強度を高めるってのが狙いだった。

"チェルシーのウィークポイント"

しかし、チェルシーのこの守備の狙いは機能していなかった。その原因・問題点は2つ。1つ目は左シャドウのアザールの守備タスクが曖昧だった事。ボール保持者にプレスを掛けるのか、中を締めるのか等の判断が1テンポ遅れていたため、右CBのホールディングはボールを保持してから比較的時間を得ることが出来ていた。よってアーセナルはビルドアップの出口を右サイドで作る事が多くなっていった。

もう1つの問題点はジエゴコスタのプレスバック不足。アーセナルの低い位置での攻撃で起点となるのはジャカとエジル。2人とも精度の高いフィードを供給出来る左脚と角度の付け方でゲームメイクが出来る選手。ジエゴコスタはCBにコース切りを行った後、その2人へのプレスバック(アンカー切り)をあまり熱心にしなかったため2CHのカンテとマティッチにその2人を抑えるというタスクが課せられるようになる。よってアーセナルが中盤での数的優位を
より活かしやすい状況となる。特にアンカーのジャカへプレスを掛けるために本来のポジションから離れるカンテのゾーンでは、ラムジーや降りてくるサンチェスがフリーでボールを受ける場面が見られ、いつアーセナルの追加点が決まってもおかしくないような流れになっていった。

"前プレとBFG"

この試合の前プレ時のアーセナルは5-2-3と5-3-2の中間のようなシステムだった。と言うのもエジルがハーフスペースに位置してケーヒル→アザールのパスコースを制限していたためどの列に加えるか、かなり微妙なところで判断出来なかったから。CBへのプレス隊はサンチェスとウェルベックの強度の高い2人。
サンチェスをボールの前進させる能力が高いアスピリクエタに引っ付けてチェルシーのビルドアップを制限。ウェルベックのところで1対2の数的不利になってしまうけれど左CBのケーヒルは右利きで角度を作り辛いため、ドリブルで持ち上がろうとすればウェルベックのプレスバックが間に合うよ〜って仕組みだった。

このアーセナルの前プレはかなり機能していてチェルシーのボールの前進を妨げていた。よってチェルシーはクルトワを使いロングボールでのプレス回避を行おうとするも、残念そこはメルテザッカー。試合前に3バックはした事がないと発言する等、アーセナルファンの不安を募らせていたメルテザッカーだったが、この試合では再三空中戦に勝つは、シュートブロックをするはでMOTM級の活躍だった。

こんな風に前半はアーセナルが定位置攻撃でもカウンターでもらしさを見せるも追加点が取れないという展開で終了。

"後半、コンテの修正"

後半、コンテがまず手を付けてきたのはビルドアップ時の3CBのポジショニング。ビハインドなのにボールを運ぶ段階で苦労してたらマズイよねってこと。前半よりアスピリクエタをサイドに張らせてDFラインの距離感を広げ、アーセナルの前プレ隊を分裂。更に2人を相手にしていたウェルベックの移動距離も長くなるためダビドルイスが時間を得られるように。このダビドルイスがジエゴコスタへ楔を打ち込んだり、ウイングバックへロングフィードを送ったりしてボールの前進を成立させていた。つまり、コンテの修正は成功した事になる。

もう1つの修正としてマティッチを最終ラインに出入りさせて最終ラインでの数的優位を確実にする事が見られたけれど、マティッチはイージーなパスミスが目立っていたためラムジーはゾーンを守る事を優先しマティッチを放置していた。よって後半16分、マティッチに代えてセスクを投入する。

これで中盤の展開力が上がる!タッチダウンパスでアーセナルのDFラインの背後も突ける!ってな雰囲気で流れが傾き掛けていたチェルシーだったが後半22分、モーゼスがダイブで二枚目のイエローを貰い退場。

"10人のチェルシー" 

1人少なくなった事でチェルシーはペドロ→ウィリアンの交代。システムを守備時は4-3-2,攻撃時はSBが幅取り役になる2-5-2に変更。1点ビハインドな状態なので取り敢えず攻撃の枚数は確保しているという風な形だった。ただ、「本来のポジションに戻るのに時間を要するため、ネガトラで穴になる」という可変システムの弱点をアーセナルに狙われるように。特にエジルとベジェリンは何度もSB裏にスプリントをかけてゴール前に迫っていた。

それでも追加点が決まらないのがこの日のアーセナル。そして後半30分チェルシー同点。ウィリアンがペナルティエリア手前から上げたクロスをジエゴコスタがねじ込んでゴール。ジエゴコスタのトラップからの一連の流れが見事という他無かった。

ってチェルシーに期待抱かせたところで後半33分アーセナル勝ち越し。ジルーのスペースメイクからのパスに飛び込んだラムジーが合わせてゴールとらしさ全開の得点だった。投入されて30秒でアシストするというジルーの仕事人感も流石。

残り10分、人数が少なく手数の多い攻撃が難しいチェルシーはクロス攻撃を仕掛ける。しかしメルテザッカーとオスピナの壁に阻まれ続ける。コンテは残り数分で唯一クロスをチャンスに結び付けられていたジエゴコスタをバチュアイに下げるという少し「?」な采配。

試合はこのまま2対1で終了。
アーセナルの優勝だああああああああああああああ!

"まとめ"

運も実力のうちさ。
攻撃性能の高いWBをどう浮かせるか・どこに空間的優位を作り出すかというプレーの型が取れてきた。特にウェルベックやエジルが左抜けして右レーンをベジェリンに走らせていた場面が印象的。
個人的に見たかった3-4-2-1と4-2-3-1を試合中に切り替えるというのはこの試合では見られなかったけど、それは来季のお楽しみって事で。

取り敢えず、16-17シーズン皆さんお疲れ様でした!!













P.S.
昨晩、ブログの変な投稿をTwitterに連発してしまいすみません( 笑 )
Twitterでの表示のされ方を調整していました( ´•ω•` )

オフシーズンも移籍話などボチボチ楽しんで書いていこうと思うので宜しくお願いします(。-_-。)

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