【マンチェスターシティ 対 アーセナル】
スタメンどーん。
ホームのマンチェスターシティはいつも通りのメンバー。
アウェイのアーセナルのスタメンは色々とびっくらぽん。前節のスウォンジー戦からの変更はメルテザッカー→コクラン、ラカゼット→イウォビでサンチェスを最前線へした事。試合前にスタメン発表の図でシステムを4-3-2-1と表記して騒がせたのに、結局はコクランCBの3-4-2-1だったという茶番を挟んで試合開始。
・アタッキングサードでのプレス。
この試合のアーセナルのアタッキングサードでの前プレは機能していたとは言い難いですが、マンチェスターシティのビルドアップの方法を見て、2つの形を使い分けていたように見えました。
<①中盤ぼかし型>
マンチェスターシティのビルドアップは、GKを組み込んでピッチ内で11対10の状況を確保する事を基本としています。だから当然、アーセナルがマンツーマンディフェンスでプレスを掛けても1人フリーになる選手が出てきます。
この試合でフリーになる機会が多かったのはフェルナンジーニョ。ここを2CHが周りのフォローを得て数的不利を誤魔化し、ハメて行こうというのがアーセナルの前プレの仕組みでした。
イウォビがストーンズを、エジルがオタメンディを捕まえる事で1列目での数的不利を解消。
ストーンズはエデルソンへリターン。ジャカ・コラシナツ達も噛み合わせを作っている事がわかりますが、11対10なのでサンチェスがエデルソンへプレスを掛けるとどうしてもフェルナンジーニョが空いてしまいます。
ここで一工夫入れるのがラムジーとエジル。ラムジーがフェルナンジーニョへアプローチ、エジルが内側に絞る事でラムジーのマーカーであるシルバをケアし、パスを外へ誘導。
(ここでフェルナンジーニョへのアプローチが間に合うのはやっぱり馬力のあるラムジーならではだよな〜)
オタメンディへボールが渡ると2人とも元の位置へ。シティのキーマンであるIHへのパスルートを塞ぎ、再び外へ誘導します。
ここがアーセナルのボール奪取スイッチが入るポイントです。相手のパスの出し所が予測出来れば出足を速くする事が出来ます。それに加え、アーセナルのWBは脚力がありますからボール保持者にかかる圧力はかなり高くなります。
サイドという事でスペースやパスコースも少ないですから…
シティは足元で繋ぐ事に限界がくる→ロングボールに逃げた所を回収〜という流れに持ち込む事が出来ました。
<②CBによる迎撃型>
(ジャカとラムジーの位置はその時その時で変わる。)こちらはマンチェスターシティがエデルソンを使わず、フィールドプレーヤーのみでビルドアップを行っていた際に見られた形です。
マンチェスターシティのシステムは4バック+3センターの形なので3-4-2-1では噛み合わせが作れず、アーセナルがこのままプレスを掛けても剥がされる可能性が高いです。だからCBをシティのIHへの撃退に向かわせてCHを押し上げ、1列目の前プレ隊に加えようというのがこの形の狙いです。
この場面ではジャカが前プレ隊に参加してジャカ-フェルナンジーニョ、エジル-オタメンディ、サンチェス-ストーンズ、イウォビ-ウォーカーと噛み合わせを作っています。
そこをCBのモンレアルの撃退でケア。よってウォーカーに残された選択肢は外→外のパスのみ。
パスの出し所を絞る事が出来ているので…。
先程と同じように脚力のあるWBを生かしてボールを刈り取る事が出来ますよ〜という流れに持っていく事が出来ました。
・このプレスが機能する回数が低かった理由。
形があるなら何でそれを90分継続しないんだ!って話に当然なりますよね。まあそれには、このシティ対策の守備の形の欠陥と言うか、継続出来ないちゃんとした理由がありまして。この試合で特に目立っていたのが「サンチェスの守備の気紛れさ」と「中盤の空洞化」でした。
<サンチェスの守備>
<<チェルシー戦>> でも見られたように、このレベルのチームを相手にするとサンチェスの守備の気紛れさや曖昧さが、前プレが機能するかしないかという事にかなり影響が出てくるんですよね。例えばこのシーン。
シティのエデルソンを使うビルドアップ。つまり、アーセナルのプレスの形は先ほどの①中盤ぼかし型になります。
この場面、サンチェスが他の選手に前に来るよう促していますが…
ジャカが首を振って背後を確認するとそこにはデブライネが(画面には見えていないけれど)。距離が離れているため、ジャカがフェルナンジーニョとデブライネの2人を同時に見る事は難しく、エジルも同様に逆サイドのオタメンディを見ているためフェルナンジーニョまで寄せる事が出来ません。
イウォビは自分のマーカーであるストーンズにボールが渡ろうとしているため、プレスをハメるには絶対にアプローチに行かなければなりません。
つまりここではサンチェスがフェルナンジーニョを見なければならない、という状況なのです。
しかし、サンチェスは後ろの状況を確認しておらず、エデルソンにパスが出るだろうと先読みしてフェルナンジーニョへのプロテクトを疎かにしてしまっています。
案の定、フェルナンジーニョを使われ1列目を突破されてしまいました。
GKへ食いついて本来マークすべき選手への守備が後追いになってしまうという、チェルシー戦でダビドルイスにやられたプレーの再現のようなプレーです。
こうなってしまうとボールの奪い所が掴めないどころか、アーセナルの選手全体の重心が前に掛かっているため、擬似カウンターを受けてしまうリスクが高くなるんですよね。
まあ擬似カウンターはコクランのアグエロ番のお陰で何とか受けずに済んでいましたが。本当、どこまでも付いて行ってた。メルティやエルネニーの機動力では無理なプレー。
ただこれは、相手に前プレを外された時に相手の攻撃を遅らせるための保険のようなものであり、ここでボールを奪う事はまず出来ないので、前プレでハメてボールを刈り取るというアーセナルの目的は失敗に終わったと見るべきでしょう。
<②CBによる迎撃型>の場合でもそう。
この場面でもサンチェスは味方に前に出て来いと言うようなジェスチャーを見せています。
で、それに連動するようにジャカが前プレ隊に加わり、コシェがIHのシルバへの撃退に向かうのですが…
またしてもフェルナンジーニョへのプロテクトが出来ていなかったため簡単に1列目の守備を突破されてしまいました。
再びコクランのアグエロ番によってアグエロにバックパスを選択させる事ができ、何とか擬似カウンターを逃れましたが(コシェが出ていったタイミングでコクランに指示を出しているラムジーが地味にナイスw)、先ほどと同様にボールを刈り取るという目的は失敗に終わっています。
<中盤の空洞化>
先述の通り、アーセナルの前プレは2CHを前プレ隊に加えて噛み合わせを作る事が狙いであり、絶対条件となっています。しかし、何処かに人数をかければ、何処かの人数が少なくなるというのがサッカーの理。その仕組みの悪い面がこちら↓↓
【<①中盤ぼかし形>のプレスの成功例としてあげた場面を別角度から見たモノ。】
マンチェスターシティのIHのデブライネとシルバは組み立てに参加するために、どこまでも下がっていきます。ジャカ・ラムジーは前プレを成立させるためにそれに付いていかなければなりません。
対してマンチェスターシティの前線3枚は高い位置に張ったままなので、アーセナルのCB陣は高い位置を取る事が出来ません。
その結果、中盤に大きな空間が出来てしまっています(シティが擬似カウンターを発動させるタイミングでアグエロがここでパスを受けようとしていた理由がこれ)。
ハイラインなのにまだ前方にはかなりスペースがある。つまりシティのアタッカーには間受けや裏抜けの絶好のチャンスがあって、それらをケアしなければならない…と、CB陣にかかる負担が物凄く大きくなってしまっています。
CHが前プレに出ていきCB前のスペースが空く→そこにボールが送り込まれ、CBが撃退に向かう→その裏をウイングに使われる、といった流れでマンチェスターシティ相手に失点した事は記憶に新しいです。
まあシステムが変わって後ろの枚数が増えたため、これが再現される可能性が高い訳ではありませんが。
更に、この中盤の空洞化は守備面だけでなく守→攻への切り替えの場面でも問題を引き起こしていました。
<②CBによる迎撃型>の成功例として取り上げた場面から。
ボールをカットしたコラシナツはこのサイドで攻め切る事は難しいと判断し、コクランにパスを出してやり直しを図るのですが…。
コクラン「出し所が無い/(^o^)\」
2CHが前プレ隊に組みこまれていた影響で本来のポジションに戻り切れておらず、ショートパスを繋げない。ドリブルで運んで距離を縮めようにもアグエロがすぐ近くにいて、引っ掛けてしまったらジ・エンドとリスクが高い。コシェルニーにパスをしようにも、サネに狙われている。ロングボールで一旦立て直そうにもターゲットがいない&中盤にスペースがあるのだからセカンドを十中八九シティに拾われる…とほぼ詰みな状況。
ボールをなかなか奪えない+重心が前に掛かっているので逆に擬似カウンターを受けるリスクがある+奪えても攻撃に繋がらない…
前プレを仕掛ける事は体力の消費が激しいため、こういう状況が続くと収支が合わなくなってしまうんですよね。
よってアーセナルは時間が進むにつれ前プレを仕掛ける頻度が低くなっていき、守備ラインを低く設定する回数が増えていきます。
・ハーフラインちょい前からの守備。
アーセナルのハーフラインの少し前からの守備は5-4-1と5-2-3の中間のようなシステムで行っていました。
イウォビ・エジルはSHの位置にセットしておく訳でも、1列目に加わってガンガンプレスを掛ける訳でも無く、ボールの移動に合わせてスライドし、デブライネ・シルバへのパスルートを塞ぐといったような守り方をしていました。
対してマンチェスターシティは両ウイングをサイドにめいいっぱい張らせてアーセナルのWBをピン止め+横幅を確保。デブライネ・シルバを2CH脇に、両SBを比較的低い位置に配置してアーセナルのシャドウを囲うようにトライアングルを形成し、そこを糸口にボールを前進させていました。
…正直言って選手のエラーを挟まずにマンチェスターシティからこのエリアでボールを奪うのは無理( 笑 )。アーセナルに限らず、殆どのクラブがそうなんじゃないかな〜。
ビエルサのビルバオやロジャーシュミットのレヴァークーゼンみたいに「裏のケアとか知らん!4バックには4トッププレスじゃ!」ぐらいやるチームならここで刈り取れるかも知れないけど。
サンチェス・イウォビでパスコースを2つ制限しているのに、更に2つパスコースを用意出来ているいるというこの余裕。
このように、ここからのマンチェスターシティの組み立て・ボールの前進を防ぐ術が無いので、アーセナルは後退して5-4-1でセットアップする守備に切り替えるしかない状況になってしまいます。
・ハーフラインより後ろでの守備。
ハーフライン前での攻防との違いはアーセナルの両翼が完全に引いてSHになる事と、マンチェスターシティのIHのポジショニングが相手CH脇から2-3列目間になる事です。
これらの両チームの変更の狙いは至ってシンプル。「バイタルエリアの主導権を握る事」ですね。アーセナルは中央の密度を高めて間受けを狙う相手を撃退したい、シティは間受けの的を複数用意して相手に守備の的を絞らせないようにしたい、という事です。
ただ、ここでアーセナルに問題が。それは「サンチェスのプレスバック不足」です。
細かく言うと、サンチェスはフェルナンジーニョら辺のラインまで下りては来るものの、そこで相手に圧力を掛けたり、サイドチェンジを妨害するためのコース切りをしたりする事が全く無かったという事です。
このように、間受け対策として中盤と最終ラインの間をコンパクトにすると、フェルナンジーニョやオタメンディにかなりのスペースを与えてしまっている事がわかります。
これによって、フェルナンジーニョやCBが何の制限も無くフォロー・散らしに向かえるため、アーセナルはマンチェスターシティに局地的な数的優位を何度も作られていました。
いつまでもボール奪取の目処が立たず、焦れてCHが飛び出して行くと…
(…しっかし、当然のように半身トラップでワンタッチで前を向く事を成功させ、攻撃のスピードを落とさないシルバの技術よw アーセナルのブリティッシュ勢・サンチェスはこれがとことん苦手。)
序盤にこれを見せられた事により、アーセナルは5-4-1でセットした時はCHがアンカーやCBに圧力を掛ける事を諦め、中盤と最終ラインの間を潰す事を徹底するベタ引き守備を選択するようになります。
つまりそれは、中盤のラインより前のスペースの主導権を完全にシティに明け渡す事を意味します。
現状のアーセナルのシステム等を考慮すれば、この選択は間違いでは無いのですが、これが2失点の原因となってしまうんですよね。
<1失点目>
マンチェスターシティがサイドの深い位置を使ったクロス攻撃後のやり直しを図っているところから。先述の通りフェルナンジーニョが何の制限も無くデブライネのフォローに行けているため、アーセナルはラムジー対デブライネ・フェルナンジーニョという数的不利を作られています。
(ジャカは前のプレーで、クロスに対してニアサイドのケアをする役割を担っていたため、ここでジャカにフェルナンジーニョのケアまで求めるのは明らかなタスクオーバー)
左足でコシェルニーの股+ファーサイドギリギリを射抜くシュートを叩き込まれ失点…という流れでした。
<2失点目>
マンチェスターシティの定位置攻撃の場面。エジル・ジャカが首を振ってシルバ・デブライネの配置を確認している事から間受けを警戒している事がわかります。
ジャカがデブライネへのパスコースを制限(シルバにはコシェルニーが前に出てパスを入れさせないよう牽制)。
しかし、こうなるとやっぱりフェルナンジーニョがフリーになってしまいます。
で、結果フェルナンジーニョに寄せきれない→
自由にフィードを蹴らせてしまう→スターリングに裏抜けされてPK献上という形で失点してしまいました。
これらのプレーの流れの中ではイウォビのロストや、コラシナツのラインコントロールミス等、選手のエラーも若干絡みましたが、アーセナルの守備構造の穴を突く再現性の高い攻撃を繰り返し、そのエラーが起きる可能性を高めたマンチェスターシティが上手だったと言うべき2失点でした。
ただ、もう少し防ぐ手立てはあったのでは?とも思うんですよねこれ。
システムや前線の選手のポジショニングに違いはあれど、間受けを警戒させて中盤底の選手を浮かせ、そこからの展開や攻撃参加で得点を狙うって形は今季アーセナルがやって来た事であり、相手にされると嫌な事と言うのは絶対にわかっているはずなのだから。
【スワンズ戦】
【ワトフォード戦】
(この中盤底が浮く仕組みのお陰でジャカの総パス数はリーグトップクラス。チャンスクリエイト数、キーパス数、アシスト数、シュート数もトップ6のアンカータイプの選手とと比較してもかなり上。)
フェルナンジーニョにはこのようなパスは出せないだろうと踏んでいたのかな〜。だとしたらスカウティングがどうなってんねんって話だけども。
・アーセナルのカウンター攻撃はどうなっていたのか。
サンチェスのプレスバック不足について触れましたが、ご存知の通りスーパーな前線の選手が守備を熱心にしない事はよくある事です。
そういった個で打開出来る選手は守備でハードワークさせるより前線に残らせておいて、カウンター時に力を発揮してもらう方が全体的な収支はプラスになる…という考えですね。(スペインの2クラブの前線や同じロンドンのアザールでござーるさんがこの典型)
って事でアーセナルのカウンター攻撃の場面を振り返ってみます。
局面はシティの定位置攻撃に対してアーセナルが5-4-1のブロックを敷いているところ。
(ここでもCHに前に出るよう要求しているサンチェスに「だからそれ無理だってw」というツッコミを入れたE)
幸いジャカはそのサンチェスの要求に釣られず、ルックアップして背後のシルバ・アグエロを確認し、ライン間を消す事を優先しています。
最終ラインと中盤の間のスペースを非常に狭くしているので、このようなパスを入れられても…。
はい。カットしてマイボールにする事が出来ました。これからカウンターに移行するぞ!って場面です。
…とここで注目して欲しいのがサンチェスのポジショニング。プレスバック不足を指摘した時に補足として、「フェルナンジーニョら辺のラインまで下りては来るものの、そこから相手に圧力を掛けたり、コース切り等をする事が全く無かった」という説明を付け加えていましたが、今のサンチェスは正にその状態です。
ただこれシティの目線で見るとサンチェスは、「守備をしないのに、捕まえやすい中盤に降りてきてくれる超都合の良い選手」なんですよね。
↑↑のシーンでもフェルナンジーニョは攻守が入れ替わった直後にも関わらず、サンチェスへアプローチする事が出来ているのがわかると思います。
よって…
「アカン!カウンターどころか、5人に囲まれて大ピンチや!」
という状況になってしまいました。
また、このサンチェスの下りてきてボールを足下で貰いたがるプレーはサンチェスを経由しないカウンターの場合でもカウンター失敗の原因となってしまっていました。
アーセナルの守備システムはシャドウを完全にSHの位置に落とした5-4-1です。
ボールを奪ってカウンターに移行する場面。このタイミングでの1トップの選手の本来の役割は裏抜けで相手守備陣の縦幅を広げ、後ろの選手が飛び出していけるスペースを作る事です。
ボール保持者に選択肢を持たせてカウンター攻撃をスピードアップさせ、フィニッシュまで持っていく事が狙い。
しかし、サンチェスはこれと真逆のアプローチを取っていますよね。
これによって、シャドウをSHに落として守備をしているアーセナルは誰が裏抜けして縦幅を確保するねんって状態になってしまいます。
マンチェスターシティのCBは裏抜けを警戒しなくて良いのだから、わざわざラインを下げる必要がありません。
CBのラインが高く保てるという事は、その前のフェルナンジーニョも高い位置で守備に回れるという事に繋がります。更に、マンチェスターシティの攻守の切り替えはとても早く、シルバやデブライネといった選手が次々とプレスに来ます。
裏抜けする選手にロングフィードを送ってプレスを回避しようにもそのターゲットがいない、その影響で縦幅が確保出来ておらずスペースが無いため相手の間を突きながらショートパスで速攻というのも無理。
つまり、この地点でアーセナルに残されている選択肢はプレスに捕まりやすい近場でパス交換するしか無いという事。当然、プレス強度がとても高いエリアなのでミスを連発。カウンターを成立させられない事が何度も続きました。
具体的な例を出すとこんなの↓↓
アーセナルの5-4-1の撤退守備から。
サネの横ドリブルを…。
エジルがカット!さあカウンターという場面。この地点で既にボールに対して3人反応している事からマンチェスターシティの切り替えの速さがわかると思います。
で、サンチェスはこれだけ相手がボールに集中してる+自分もウォーカーに完全に捕まっているにも関わらず足下で貰おうと下がってきています。
ここへボールを送ってもさっきようなピンチになるのが目に見えていますので、当然パスは出せません。
ここサイドに抜けるように走って、ウォーカーを釣り出してくれればイウォビが空くのにね〜😅
デブライネがイウォビに付いていくようなら、ラムジーの前にスペースが出来る。
結局、シティ3人の圧力を受けながら近距離パスをするという選択肢しか無く、引っ掛かってしまいカウンター失敗という流れに。
今季のアーセナルはプレス回避で「中盤の個人で剥がす能力」に頼るようなアプローチはとっていませんし、この試合の中盤の選手の特徴や組み合わせを見ても、
1トップの選手は裏抜けでロングフィードを引き出したり、縦幅確保でスペースを作ったりするタスクを遂行するべきなんですよね。
現にこの試合の前半の一番のチャンスは、
サンチェスが裏に走ってロングフィードの引き出しを行い縦幅を確保。それによって出来たスペースにラムジーが攻撃参加。
サンチェスの溜めで時間確保→ラムジーが持ち込んで股抜きシュート…
って形だったじゃないですか〜。勿論、こんな縦ポン攻撃だけで勝てるって訳ではありませんが、まずこれを相手に見せて中盤にスペースを作らないと何も始められないでしょと。
ボールを狩られ続けているのに足下で受け続けたサンチェスもですが、これらの動きが大得意であるラカゼットをベンチに置いてサンチェスをCF起用したボスの選考にも疑問が残ります。
・定位置攻撃を振り返ってみる。
マンチェスターシティのボール保持が安定していた事と、カウンターがなかなか成立せずアーセナルが敵陣に押し込めなかった事によって、見られた回数は少なかったですが、アーセナルはシティの守備をかなり研究していたように見えたので振り返ってみます。
【アーセナルはラムジー・エジルが、マンチェスターシティはシルバ・デブライネがその時その時でポジションチェンジをする。】
マンチェスターシティは、ハーフラインより後ろの守備では4-1-4-1と4-4-2の2つのシステムを使い分けていたように見えました。システムを変えるトリガー等は不明。
それに対してアーセナルはどちらのシステムにも配置的優位を確保出来るよう、イウォビをIHに置く3-1-4-2を用意してきていました。
マンチェスターシティのSHのサネ・スターリングはセットアップした状態からの守備が上手くありません。(これは攻→守の切り替えや前プレの時ような自分達が動いて先手を取る、相手にプレスを外されても失点するリスクが低い守備とはまた別物。)
そしてこれはIHのデブライネ・シルバにも当てはまる事です。元はトップ下の選手という事や、マンチェスターシティのスタイル的に守備をセットアップする機会が少ないという事が影響しているのでしょう。
とにかくシティの2列目はライン間やIH脇のケア、横スライドが物凄く甘いんですよね。ここを徹底して狙っていくと言うのが、アーセナルの攻撃のプランであり、間受け職人のイウォビを起用した理由です。
例えばこのシーン↓↓
局面はアーセナルの定位置攻撃。マンチェスターシティは4-4-2でセットしている所。
アーセナルは2トップ脇にナチョ・コシェ、相手1-2列目間にジャカ、CH-SH間にイウォビ・ラムジーを配置し、噛み合わせを作らせず、ボールを前進させる事が狙いです。
サネがコシェルニーに食いついたので(ここがシティのSHの守備の厳しいところ)コクランは大外のベジェリンへ展開。
このパス1本でシティのCH脇のスペースはスカスカになっている事がわかります。
ラムジーが壁となってワンツー。シティの選手が3人も食いついたので…
当然ジャカのマークは外れてますよね〜。
で、ジャカが顔を上げるとシティの中盤のスライド不足によってフェルナンジーニョ脇のイウォビがどフリー(2トップの一角として前プレ隊に加わっていたデブライネの戻りが遅くなるのはまあ分かるけれど、スターリングは何やってんw)。
間受けしたイウォビが右への展開を図ると今度はサネが棒立ちしとる…(やっぱりシティの二列目の守備は穴だ)。
最後は攻撃参加したベジェリンのクロスにエジルが飛び込むも惜しくも合わず…って形で攻撃終了。
2トップだからエリア内が枚数不足になるって事も無いし…普通に良いプランだったと思います。この形に持って行ける頻度を高めたかった。
また、これも回数はかなり少なかったですが、この3-1-4-2は低い位置からの組み立てでも効いていたように見えました。
2トップの一角(ここではラムジー)がCBとフェルナンジーニョを引っ張り、縦幅を確保するからエジルがフリーになる。
そのエジルに相手IHが食いつくから、ジャカがフリーになる。
ジャカがフリーになれば大きな展開を臨めるし、相手IHが再びアプローチに来たのならエジルがフリーになる。
う〜ん。人を動かしてスペースを作り、そこをビルドアップの出口にする。これぞ今季のアーセナルって感じの組み立てやな〜。
・後半も変わらないサンチェスとラカゼット投入の効果。
アーセナルがライン間をコンパクトにしていた事により、パスミス。ボールはジャカの元へ。
ここでアプローチに来るのはフェルナンジーニョ(このオッサン毎度毎度切り替え速すぎんだろw)。
ジャカはそれをいなし、ターン。そしてここでもサンチェスは足下で貰いに下りてきます。
当然あっという間に5人に囲まれ…
ダメだこりゃ/(^o^)\ファールは貰ったけど。
って事でアーセナルは後半立ち上がりに2点目を奪われた事もあり、この直後にコクラン→ラカゼットの交代。
幸いこのラカゼット投入の効果は直ぐに表れます。
この後アーセナルがボールを奪ってカウンターへと移行するのですが…
はいココ!サンチェスがCFの時の動きと明らかな違いがある事がわかりますね。
ラカゼットが裏抜けでシティの最終ラインを引っ張って縦幅を確保している事により、シティは前半のようなコンパクトな陣形を保てずジャカやラムジー・イウォビがスペースを得られている事がわかります。
次の場面でもそう。
フェルナンジーニョ・デルフがボールを運ばせまいとアプローチしているにも関わらず、イウォビを全くプロテクト出来ていません。
何故ならアーセナルの再前線が裏抜けを狙って縦幅を確保しているから(この場面ではサンチェスも)。
ん〜その後のプルアウェイでパスを引き出しながらトラップのためのスペースを確保する動きもお見事。
このラカゼットの投入によって、縦幅を確保できるようになったアーセナルはカウンターで前進していく場面が増えていきます。
・4-2-3-1での定位置攻撃。
カウンターで前進できる回数が増えた事により、アーセナルが定位置攻撃を繰り出せる回数も増えていきます(シティペースなのは変わらない)。
しかし、コクランを変えてしまったため、システムは配置的優位を活かせる3-1-4-2ではなく4-2-3-1。
アーセナルにとって幸運だったのはアグエロがミッドウィークのナポリ戦から連続出場だった影響で、後半10分あたりからプレスにあまり動けなくなっていた事。
2CB対1トップの対戦はワンサイドカットで対応されやすいですが、それがありませんでした。よってアーセナルは最終ラインで時間を確保でき、引き続きシティの中盤の脇を狙った攻撃を繰り出す事ができるようになります。(前線の枚数が増えた分、破壊力はコチラの方が上かも…?)
ラムジーのサイド落ちでシルバを釣り出し、エジルがその背後をとって間受け狙い。
シルバが邪魔なので、縦パスを入れるのはコシェから。
この間に首を振ってフェルナンジーニョが突撃して来ている事を認識。
で、出来るだけ食いつかせた所でイウォビへ。本当はフェルナンジーニョが空けたエリアへ誰か侵入して来る事がベスト。
まあそれが無くても中→中→外の組み立てによって、イウォビとベジェリンで数的優位という状況までもって行く事が出来ています。
これを見たグアルディオラは数分後にアグエロ→ジェズスの交代を行い、守備システムも完全に4-4-2に変更します。
…でもこれ、ジェズス投入はわかるんですが4-4-2に変更するのってかなり悪手だったと思うんですよね〜。
4-1-4-1でも横幅を守りきれていなかったのに、連戦の疲れが見えてくるこの時間帯に中盤減らして更に脇のスペースを広げては…
この人が黙っとらんでしょう。
・得点シーン。
左から右へと展開されるアーセナルの定位置攻撃。マンチェスターシティの守備システムは4-4-2。一列目で2CBと噛み合わせを作る狙いです。
しかし、シルバは特別前プレの強度が強い選手では無いためコシェルニーはそれを回避。
そしてボールは前半から狙い続けていたSH-CHにポジショニングするイウォビへ…。
完全に入れ替わったー!
ここから攻撃は一気にスピードアップ。まずイウォビが前を向いたことによりデルフを食いつかせ、その裏へラカゼットが走り込み。
んでそのラカゼットにオタメンディが付いて行ったためイウォビはラムジーにパス。
数タッチ運んでオタメンディを食いつかせ…
完璧なタイミングでスルーパス。抜け出したラカゼットがエデルソンの足下を抜いてゴール!という形です。
ベジェリン-イウォビ-ラムジー-ジャカ-コラシナツのポジショニングを見ると「シティの2列目を横に広げてその間を使う」という意識の高さがわかると思います。
・守備面での4-2-3-1の効果。
噛み合わせが出来て(ラカゼットは2CBに対してワンサイドカットで対応)明確なフェルナンジーニョ番を置けるようになった事。これが相当大きかったですね。
コクラン不在でライン間の撃退の強度は落ちましたけど、相手のミス待ちだった守備から前へ出ていける守備へと変わっていきました。
まあただ…
ラカゼットがワンサイドカットをする前にサンチェスがゾーンを放棄してCBの所まで行ってしまうので、プレスでハメるシーンは全く見られなかったんですけど😅
それどころか後ろの枚数が少なくなった分、CHとCBのスライド量が相当多くなってたし、かなり陣形を崩されテタ。
・3失点目
…以上。
再び2点差になってしまった事で攻めるしか無くなったアーセナル。とりあえず定位置攻撃の頻度を高くするために、プレス回避役としてウィルシャー・ジルーを投入します。
・ウィルシャー投入効果。
局面はアーセナルが組み立てで前進するポイントを探っているところ。まずはSH-CH間でエジルがパスを受けるお決まりの形ですが…
フェルナンジーニョの超素早い寄せによって前を向かせてもらえません。
しかし相手は2CH。この位置でエジルにフェルナンジーニョが付いて行ったと言う事は、中盤にスペースが出来ていることを意味します。(ウィルシャーは首振ってそのスペースを確認)
遠い足下でトラップして、相手を出来るだけ懐に誘い込み…
次のワンタッチでボールを押し出し抜き去る!
う〜ん。これぞウィルシャーよの〜。このプレス回避。ファールで止められてしまう辺りがまだ本調子ではない証拠かな。コンディションが良ければ接触する前に相手の前に体を入れきってるやろし。
アーセナルサポ「おいギュンドアン突っ込むなよ。ウィルシャー怪我するだろ。」
シティサポ「おいウィルシャー突っ込むなよ。ギュンドアン怪我するだろ。」
続いて次のシーン。先ほどと同じくプレス回避を必要としている場面です。
ナチョからウィルシャーへパスが入るところ。パスが出る前に首を振って背後の情報を取得。
ジェズスやベルナルドシウバ(サネって書いているのはミスw)、ギュンドアンの重心が左へ傾いていると見るや…
逆付いてCH-SHを広げ、間受けを狙うエジルへのパスルートを開拓。
まあまたしてもフェルナンジーニョが光の速さでやって来たからパスは出せなかったのだけれど。
次は密集地の打開。シルバが寄せてきていて、収められるか奪われるか50:50な状況。
遠い足でボールを隠してお尻でシルバをブロック。
前向きフリーになれるスペースを強引に作成( 笑 )。
フェルナンジーニョが視界に入りますが…
それを嘲笑うかのようなロブパス。
ジルーが競った後のセカンドをコラシナツが拾い、シュートチャンスまで持っていきましたとさ〜。(このロブパスを引き出してマイボールにしてくれる辺りが流石ジルー)。
ウィルシャー、超うまい。
狭い所ばっかりにボールを配給するゲームメイクは褒められたものでは無いけど。
…と言うように最後の方は幾らかチャンスを作れるようになったのだけれど、シティペースを崩すほどのものでは無く、1-3のまま試合終了〜。
・この試合の雑感。
終始シティペースだった事には異論が無いけれど、ポジティブ要素も普通に発見出来たので、何というかどんより感はそこまで無い。
マンチェスターシティはデブライネやシルバもまあそうなんだけれど、フェルナンジーニョがすんげえ邪魔。カンテとか比じゃないくらいに邪魔。カウンター何本潰されたねんって感じ。
アーセナルについては、ラムジーのタスクを調整せんとヤバイんでないかな?と。
前プレ隊+撤退守備でライン間の挟み込み役+カウンターでのワントップ追走役+IHでの間受け役+2トップの一角での縦幅確保役etc…とかなり無茶させていたように見えた。代表で怪我したとの噂もあるし相当怖い。
ちなみに、サンチェス批判が相当多いけれど、サンチェスはユニフォームを買うくらい大好きな選手です。
※図にしやすいという事を優先して切り取っているので、事象の時間と説明している順番が逆!という場面がありますが、ご了承ください。
いつも楽しく読ませていただいてます。
返信削除こんなに内容の濃く、分かりやすいブログを書くのは大変だと思いますが、これからもがんばってください!
毎試合読めたらとても嬉しいです。
読んで頂き有難うございます!
削除出来る範囲で更新して行こうと思いますw